今回は「個人間融資 接待のプロフェッショナルとは?」です。
たい焼きにもある「養殖もの」「天然もの」
たい焼きの型は主に2種類ある。一つは、2枚の鉄板を合わせて数匹分をまとめて焼く量産タイプ。もう一つは、鯛の形をした鋳型で一匹ずつ焼き上げる、昔ながらの“一丁焼き”と呼ばれるもの。近年、愛好家たちは、前者を“養殖もの”、後者を“天然もの”と呼び分けているが、何ともわかりやすい俗称である。
わかばは、後者の一丁焼き。洋画家の故・木村荘八が描いた色紙絵からおこした特注の鋳型を使っている。片面の型に生地を注ぎ、あんこをのせて、その上へ生地をたらしてもう片面の型で挟み、両面を焼き上げる。見ていると特段、難しそうな点はない。しかし、社長の甥で店長をつとめる伊藤巧真さんはこう言う。
「わかば」の伊藤巧真店長。
「気候や仕込む職人によって、あんこも生地も状態が異なります。その日の材料に合わせて、ただでさえ個体差の生じやすい一丁焼きで、ムラなく焼き上げるのは難しい。尻尾の端まであんこを行き渡らせるのにも、技が要ります。奥が深いし、一筋縄ではいきません」
一匹に使う生地は40g、あんこは80g。体で覚えたその分量を瞬時にすくいとり、鋳型のクセや火加減も計算しながら焼くには、集中力が必要。一匹一匹、真剣勝負で焼き上げていくのだという。
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